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どうも、ちゃんなるです。
今回紹介するのはこの本!
『繁栄のパラドクス 絶望を希望に変えるイノベーションの経済学』
1960年以降、貧しい国々を援助するための政府開発援助(ODA)に4兆3000億ドル以上が費やされてきました。
しかし、1960年の貧困国の多くが現在も貧しいままです。
さらに、少なくとも12国が、数十億ドル相当の援助を受けていながら、1960年よりもさらに貧しくなっている事実があるのです。
なぜこんなことになっているのでしょうか?
それはひとことで言うと、援助の仕方が不適切だから、です。
本書で著者は、貧困をなくすためには『市場創造型イノベーション』が必要であり、ただ単に貧困を直接解決するためにインフラや制度に資金を投じればいいわけではないと主張します。
本記事では、繁栄とは何か、今日繁栄している国はどのような過程をたどっているのかということに焦点を当て、簡潔にまとめます。
はじめに
今回の記事は、本書の一部を要約したものです。
本書は全部で14の章があり、それを四つに分けた四部構成となっています。
第一部:市場創造型イノベーションのパワー
第二部:イノベーションと社会の繁栄
第三部:障壁を乗り越える
第四部:イノベーションにできること
今回は、第一部『市場創造型イノベーションのパワー』についてです。
著者紹介
クレイトン・クリステンセン()は、アメリカ合衆国の実業家、経営学者。初の著作である『イノベーションのジレンマ』によって破壊的イノベーションの理論を確立させたことで有名になり、企業におけるイノベーションの研究における第一人者である。また、イノベーションに特化した経営コンサルティング会社であるイノサイトを共同で設立し、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の教授も務めた。
(クレイトン・クリステンセン - Wikipediaより)
本書第一部の3つのポイント
①国の繁栄とは
②市場創造型イノベーション
③市場創造型イノベーションが起きるとどうなるか?
①国の繁栄とは
本書は、「繁栄に向かう道を見つける国と、そうでない国の違いはなんなのか?」という、たったひとつの問いから始まります。
一般的に『繁栄』とは、教育の受けやすさ、医療、安全、統治などがしっかり整備されていることです。
本書では『繁栄』を、『多くの地域住民が、社会的・政治的な幸福度を向上させていくプロセス』と定義します。
著者は、繁栄は状態でなく過程のことだと主張します。
これは、「今豊かであること」ではなく「どうしてここまで豊かになったか?そのためには何が行われてきたのか?」が大切ということでしょう。
今日は裕福な国であっても、昔は貧困国であったという国はたくさんあります。
想像し難いですが、我が国日本も、世界屈指の経済大国であるアメリカやヨーロッパの国々も貧困を抱える時代があったのです。
ではなぜ彼らは貧困を脱したのでしょうか?
そこには何があったのでしょうか?
それは、『イノベーション』です。
本書ではイノベーションは3種類あるとしていますが、貧困国の経済を大きく発展させる力があるのは、市場創造型イノベーションに他ならないとされています。
(3種類:持続型イノベーション、効率化イノベーション、市場創造型イノベーション)
②市場創造型イノベーション
市場創造型イノベーションとは、新しい市場を創造することです。
新しい市場とは、たくさんの無消費者を対象とした市場のことで、
無消費者とは、『生活のある部分を進歩させたいと切望しつつ、そのためのプロダクトを買えない、プロダクトの存在を知らない、プロダクトを入手する手段がない状況にある消費者のこと』です。
「???」
例えば、
アフリカのある村に住む人々を考えてみましょう。
そこでは車や道路などのインフラが全くなく、隣の村の親戚と会話するために、三日間歩いて移動しなければいけません。
彼らは、もっと親戚と話したいと切望しつつも、そのための”電話”というプロダクトを買えない、またその存在すら知らないのです。
こうした彼らのことを無消費者と言います。
彼らを対象にし、アフリカの村でも多くの人が使える携帯電話を普及させることができれば、彼らの生活は豊かになるでしょう。
馬車で移動するのが当たり前であった時代の人々を無消費者とすると、安価な自動車を提供することが市場創造型イノベーションとなりえるでしょう。
(アメリカのフォードモーター社が実例に当たる)
市場創造型イノベーションは、優れたプロダクトやサービスを、安価でシンプルなものに変換して無消費者の手の届く状態にすることなのです。
③市場創造型イノベーションが起きるとどうなるか?
結論、以下の通りです。
- 雇用が生まれる
- 制度やインフラが整備される
- 経済が活性化する⇨繁栄する!!!
雇用が生まれる:
市場創造型イノベーションによりあるプロダクトやサービスが作られ、新たな市場が形成される。
すると、そのプロダクトやサービスを運営・発展させるために人手が必要になります。
雇用が生まれるのです。
先程の携帯電話の例で言うと、携帯電話を製造する人、お店で実際に売る人、在庫を管理する人などです。
貧困国において雇用は人を豊かにさせるもので、人が豊かになることで新たな消費やイノベーションの源泉になりえます。
制度やインフラが整備される:
新たな市場が形成されると、新たな制度が作られたりインフラが整備されることがあります。
例えば、馬車が主流の時代に新たに車という市場が形成されたとしましょう。
この場合、より効率的に車が走れるように道路が整備されたり、道路脇にお店やガソリンスタンドなどが作られたりします。
車やお店が増えると道路交通やお店運営のルールや制度が整備されていきます。
経済が活性化する⇨繁栄する!!!:
制度やインフラが整備されることで、色々なビジネスが行いやすくなり他国から投資されやすくなります。
また、増えたお店や企業からの税収が増えることで国はさらにインフラやビジネス、そしてイノベーションに投資することが可能になります。
こうなればもう既にこの国は貧困国ではありません。
ここまでの、貧困国を裕福にする過程が繁栄なのです。
まとめ
貧困をなくすためには、貧困に苦しむ地域の中に新たな市場を創造する必要がある。
決して、ただ単純な解決策を与えれば解決するものではない。
貧困国に市場創造型イノベーションを起こし、その地域で持続的に利益や雇用を生み出せるようにすることが必要なのです。
本稿は、本書の一部を要約したものです。
本書は四部構成となっているので、第一部以外の内容は後日まとめ記事を出すかもしれません。
より深く知りたい、他の内容も気になる、具体例がたくさん欲しいといった方は、ぜひ本書を手にとってみてください!
書籍情報
繁栄のパラドクス 絶望を希望に変えるイノベーションの経済学 (ハーパーコリンズ・ノンフィクション 45) [ クレイトン・M・クリステンセン ] 価格:2,200円 |
繁栄のパラドクス 絶望を希望に変えるイノベーションの経済学【電子書籍】[ クレイトン・M・クリステンセン ] 価格:2,037円 |
【書籍名】繁栄のパラドクス 絶望を希望に変えるイノベーションの経済学
【著者名】クレイトン・M・クリステンセン、依田光江(訳)
【出版社】ハーパーコリンズ・ジャパン
【出版日】2019年6月21日頃
【ページ数】448ページ